Tuesday, March 07, 2006

福岡・博多の町情報

新博多駅ビルで井筒屋が譲歩(06/03/07)                                  JR博多駅ビル(福岡市)の核テナントをめぐる井筒屋と九州旅客鉄道(JR九州)の民事調停で、井筒屋は6日、「営業が継続できれば核テナントに固執しない」と譲歩を表明した。JR九州が月内を目指す核テナント選定は、高島屋を軸に最終段階に入る。ただ、井筒屋が現実路線に転じたことが高島屋などとの面積配分に影響を及ぼすのは必至で、新たに難しい調整を迫られる。
 6日午前に第三回調停が福岡簡易裁判所で開かれ、席上で井筒屋が核テナントにこだわらない姿勢を示した。JR九州側も「原則論から話が進んだ」と評価。早ければ3月下旬にも井筒屋側に出店形態についての案を提示、調停以外の場で交渉の席を持つ。
 井筒屋が柔軟姿勢に転じたのは、タイムリミットが迫ってきたことが背景にある。JR九州は2011年春の九州新幹線全通に新ビル開業を合わせるため、核テナント決定の期限を3月末に設定。「調停が継続していても期限通りに決める」(JR九州の石原進社長)と強気を貫いた。
 井筒屋は現ビルで40年間営業してきた実績を踏まえ「まず当社と交渉すべきだ」と主張してきたが、JR九州は「各社平等」を譲らず高島屋などとの交渉は条件面に至るまで進展。「いったん白紙にとの言い方が現実的でない」(井筒屋側の今井和男弁護士)との考えに至った。
 「今でも百点満点は核テナントとしての出店」(同)ではあるが、10万人近い顧客を抱えるという博多から井筒屋の看板を下ろさないことを最優先。「ゼロか百か」の闘争から妥協点を探す戦略に転じた。
 JR九州側にとっても前進には違いないが、「もっと早く申し入れがあれば。ある意味戸惑っている」(三浦啓作弁護士)との思いもある。井筒屋の「部分参入」が、最有力候補である高島屋との交渉に影を落とす可能性があるからだ。
 岩田屋など百貨店三店がひしめく天神エリアに対抗するには、「地域最大の面積が要る」のが高島屋の譲れない一線だ。4万8000平方メートルの売り場面積に加え倉庫、飲食街など新ビルの総面積20万平方メートルのうち、8万平方メートル超を望んでいる。
 ただJR九州も自身が運営する専門店街「アミュプラザ」にある程度の面積を割く考えで、高島屋分の面積は売り場面積で3万5000平方メートルを提示しているもよう。両社の開きは大きく、高島屋は「それだけの面積では出られない」(幹部)と反発している。
 6日夜、JR九州の石原社長は高島屋と細部の交渉に臨んでいることを認め、「このまますんなり決まるか現段階では言えない」と含みを残した。
 二者に割って入る形になった井筒屋。高島屋とアミュプラザとの押し引きの間にどう組み込めるのか。JR側としても長引く議論の落としどころとして無視はできず、限りある面積をどう配分するのか新たな難題を抱えた。
 第四回の調停は4月21日で、「(補償など)退店交渉も大きな議題になる」(JR九州側)見通し。井筒屋は新ビルのテナント選定より「まず退店交渉が先」(中村真人社長)とも主張してきたが、自身の譲歩と引き換えにここでも実質的な交渉の場を引き出した。
 退店補償や井筒屋の出店形態、面積配分などすべての議論は、核テナント選定と分けて進めることはできない。JR側は調停を待たずに井筒屋との交渉を急ぎ、再開発をめぐる混乱に終止符を打つ考えだ。

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